大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

福岡地方裁判所八女支部 昭和56年(ワ)57号 判決 1984年6月19日

原告

大坪元男

ほか一名

被告

田中一也

ほか二名

主文

被告らは、各自原告大坪元男に対し金九八万三、七五〇円、原告石橋謙吾に対し金九二万九、二五〇円、およびそれぞれ右金員に対する昭和五四年三月三日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は被告らの負担とする。

この判決の一項は仮に執行することができる。

事実

第一当事者の申立て

一  原告らが求める裁判

主文一、二項同旨の判決、並びに一項につき仮執行の宣言

二  被告らが求める裁判

1  原告らの各請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告らの負担とする。

との判決

第二当事者の主張

一  原告らの請求原因

1  交通事故の発生

被告田中一也は、昭和五四年三月二日午前二時二〇分ころ、普通乗用自動車(福岡五七に八七―六三号)を運転して、福岡県筑後市大字長浜二二五一番地の一先道路上を筑後市方面から八女市方面へ向けて進行中、右自動車(以下本件自動車という)を原告ら所有の家屋等に衝突させて、これを損壊させた。

2  責任原因

(一) 被告田中の責任

被告田中は飲酒酩酊し、前方注視が尽くせない状態にあつたにもかかわらず、あえて本件自動車を運転して前記の事故(以下本件事故という)をひき起した。よつて同被告は民法七〇九条により、本件事故によつて原告らに生じた後記損害を賠償すべき責任がある。

(二) 被告中原、同中尾の責任

(1) 被告ら三名は中学あるいは高校時代からの友人であり、本件事故前日の午後一一時ころ、または事故当日の午前零時ころから午前二時ころまで、福岡県山門郡瀬高町所在のバー「しろ」で共にビール、ウイスキー等を飲んだ。その後被告らは右の店を出て本件自動車に乗車しようとしたのであるが、その所有者である被告中原は酩酊し、座り込んで吐いており、運転ができない状態であつた。

そこで、被告田中が同中尾に指示して同中原のポケツトから本件自動車のキイーを取らせ、これを受取り、自ら運転席に乗りこみ本件自動車を運転して、本件事故を発生させた。

(2) 被告中原、同中尾は、被告田中が酒に酔つて正常な運転ができない状態にあるのに、その運転を制止しないばかりか、これを容認して同被告運転の本件自動車に同乗し、運行の利益を受け、同乗後も同被告の運転が当初からいわゆる蛇行運転であり、中央線をこえて進行することが再三あり、しかも時速一〇〇キロメートルをこえる高速度で進行していたにもかかわらず、同被告に対し、「大丈夫か」と声をかける程度で、運転を中止するよう求めたことはなかつた。なお、被告田中は運転免許を有しておらず、被告中原、同中尾はこのことを知つていたのに本件事故発生まで被告田中の無免許運転を容認し、その運転する本件自動車に同乗した。

(3) 以上のとおりで、被告中原、同中尾は直接本件自動車の運転はしていないものの、被告田中の酩酊運転を制止せず、同被告運転の本件自動車に同乗し、その後も同被告の危険な運転を中止させようとせず、漫然と同乗していたのであるから、同被告の酩酊運転行為による原告らの権利侵害に対し客観的共同原因を与えたものというべく、右被告中原、同中尾は共同不法行為者として民法七一九条一項により、または不法行為の幇助者として同条二項により、原告らの本件事故により蒙つた損害を賠償すべき責任がある。

3  原告らの損害

本件事故によつて

(一) 原告大坪はブロツク塀、家屋、庭石、植木等が損壊され、合計金九八万三、七五〇円相当の損害を受け、

(二) 原告石橋は家屋の一部を損壊され、その修理費として金九二万九、二五〇円を出費し、同額の損害を受けた。

4  よつて、被告らが各自原告大坪に対し金九八万三、七五〇円、原告石橋に対し金九二万九、二五〇円、およびそれぞれ右金員に対する不法行為後の昭和五四年三月三日から支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金を支払うことを求める。

二  被告らの答弁

1  被告田中

(一) 請求原因1は、被告田中が本件自動車を運転したことを否認し、その余の事実を認める。本件事故当時本件自動車を運転していたのは被告中原である。

(二) 同2の事実を否認する。

(三) 同3の事実は不知。

2  被告中原、同中尾

(一) 請求原因1の事実を認める。

(二) 同2は被告田中が飲酒のうえ本件自動車を運転し前方注視を欠いて本件事故をひき起したこと、被告中原、同中尾が、バー「しろ」で被告田中と共にビール、ウイスキー等を飲んだこと、および同被告運転の本件自動車に同乗したことを認め、その余の事実を否認する。

(三) 請求原因3の事実は不知。

三  被告中原、同中尾の主張

1  本件事故に至る経緯

(一) 被告ら三名は、それぞれ職業を異にするが、仕事が終つた後は、時に誘いあつて遊ぶ仲間であつたが、昭和五四年三月一日深夜に被告らの友人である徳永某と瀬高町、国鉄瀬高駅前通りのバー「しろ」で落ち合う約束をしていたので、同時刻少し前に、被告中原の友人吉田千代子を連れて同店に行き徳永を待つた。その後は友人である永瀬良隆方に行き、同人に本件自動車を運転させドライブをする予定であつた。

被告ら三名および吉田は同店でビール、ウイスキー等を飲んで徳永を待つたが、同人が来ないので同月二日午前二時ころには同店を出て本件自動車で永瀬の家に行くこととなつた。

(二) バー「しろ」を出てからは、被告中原が本件自動車を運転する予定であつたが、結局被告田中が運転し、助手席に被告中尾、後部座席に被告中原と吉田が乗車して発進した。

(三) しかし、被告田中は永瀬方には行かず、国鉄瀬高駅を起点として、全く逆の方向に当る同被告のガールフレンド中島ミキ方に行き、同女を呼び出したが出て来ないので、あきらめて、今度はたばこを買うため自動販売機を捜して走り続け、本件事故を起したものである。

なお、被告中原は本件自動車がバー「しろ」を発進した直後に、ぐつすり寝込んでしまい、以後本件事故発生までのことは全く知らない。

2  被告らの責任について

被告ら三名はバー「しろ」を出て、まず永瀬方へ行くことになつていた。同人方はバー「しろ」から五〇〇メートルぐらいのところにあり、バー「しろ」を出てから国鉄瀬高駅前で右折して行くのであるが、同人方で同人と運転を交替する予定であつた。

(一) 被告中原の場合

被告中原は同田中の飲酒運転を黙認したが、それはあくまでバー「しろ」から永瀬方までの運転についてであつた。ところが、被告田中は同中原の予期に反して永瀬方とは逆の方向にある中島方に行き、さらに走り続け、バー「しろ」を出てから二〇分すぎに本件事故をひき起した。

バー「しろ」での飲酒時には、被告田中の運転は予定されていなかつたし、また発進時において本件事故現場までのコースは全く予定されていなかつた。そのうえ被告中原は発車直後に眠りこんでしまつたので、予定の変更されたことも知らず、被告田中の運転を中止させる可能性もなかつた。

したがつて被告中原は、同田中との間に行為の客観的共同関係がなく、同被告の行為を幇助したもりでもない。被告中原は本件事故につき責任がない。

(二) 被告中尾の場合

バー「しろ」での飲酒時において、被告田中の運転は予定されていなかつたから、被告中尾が共に飲酒した行為が本件事故に関する被告田中の運転行為と客観的共同関係にあるとはいえない。また、被告中尾が本件自動車に乗車後に、永瀬方へ行く予定が変更されたことがわかつた後、被告田中の運転を中断させなかつたことが同被告の不法行為を幇助したことにはならないし、被告中尾が助手席に乗車したことがその幇助となるものでもない。なお、被告中尾は本件自動車が中島方前を発進後同車が左へ左へと寄るので被告田中へ注意をしたが、そのこと自体も同被告の行為に対する幇助となるものではない。したがつて被告中尾も本件事故につき責任がない。

四  原告の答弁

被告中原、同中尾の主張は争う。

第三証拠関係〔略〕

理由

一  交通事故の発生

請求原因1の事実については原告と被告中原、同中尾の間に争いがなく、被告田中との間でも運転者が同被告であつたとの点を除けば、その余の事実は争いがない。

二  本件自動車の運転者

そこでまず、被告田中との関係で本件事故時における本件自動車の運転者が誰であつたか判断する。各成立に争いがなく、いずれも別件被告田中に対する刑事事件の証人尋問調書である甲第一三ないし一五号証、乙第一三ないし一五号証、被告中原、同中尾各本人尋問の結果(以下、右各証拠を一括して被告中原らの供述ともいう)を総合すると、被告ら三名は中学または高校時代からの友人であり、昭和五四年三月二日午前零時ころ被告中原の友人吉田千代子を連れて、同被告運転の本件自動車に同乗し、瀬高町国鉄瀬高駅付近のバー「しろ」に行き、同店でビールやウイスキー等を飲んだこと、右四名は午前二時前に同店を出て本件自動車に乗車しようとしたが、被告らはかなり酒に酔い、なかでも被告中原の酔いの程度がひどかつたので、同被告が右自動車の運転をすると言うのを、被告田中が制止して自らこれを運転し、ほか三名が同乗して発進したこと、被告田中は同町内の同被告のガールフレンド中島ミキ方へ寄り、同女を誘い出そうとしたが、同女が出て来ないので、あきらめて、今度はたばこを買うため、一、〇〇〇円札が使える自動販売機を捜し求めて(四名とも小銭の用意がなかつた)、八女方面へ向け進行し、その途中で本件事故を起したこと、なお車内における四名の位置は、運転席に被告田中、助手席に被告中尾、後部座席には、運転席の後に被告中原、助手席の後には吉田が乗り、その位置は「しろ」出発後本件事故発生時まで変ることはなかつたこと、以上のとおり認められる。各成立に争いがなく、いずれも前記刑事事件の捜査段階、または公判廷での被告田中の供述調書である乙第二、三号証、乙第一〇、一一号証中には、同被告は本件自動車を運転して中島方に行つた後、一旦瀬高駅前まで引返し、同所で被告中原と運転を交替し、その後は事故が発生するまで同被告が運転をした旨の供述記載があるけれども、右は前記認定に供した被告中原らの供述に照らして採用できず、ほかに右認定を覆えすに足りる証拠はない。なお、乙第一〇、第一一号証をみると、被告田中は右被告中原らの供述の信用性を争い、るる陳述しているので、この点について補足すれば、各成立に争いのない乙第八、九号証によると、被告田中は本件事故によつて受傷し、約二週間もの間意識を失い、その後も昭和五四年九月一九日ころまで記憶が正常に復しなかつたことが認められるところ、同被告は乙第一〇、一一号証において被告中原らの供述中の運転者に関する部分は、同人らが被告田中の右の状態をよいことに本件事故の際の被告中原の運転行為を隠すために、刑事捜査の段階からの通謀にもとづいてなされた虚偽の供述であり、このことは、被告中原、同中尾が当初は捜査官に対し、吉田が本件自動車に同乗していたことを故意に隠していたことによつても裏づけられると強調する。なるほど甲第一四、一五号証、乙第一一号証によれば、被告中原は、事故前夜から当時高校三年生で卒業を目前にした吉田を連れ出していたものであり、同女のその夜の行動が他に知られることをおそれて被告中尾と打合わせたうえ、右吉田の同乗のことを隠すこととし、本件事故の刑事捜査の段階においても、被告田中の記憶回復によつて、吉田が同乗していた事実が判明するまで、被告中尾と意思を通じ、捜査官に対してこのことを殊更に秘していたことが認められる。しかし、甲第一四号証、乙第一三号証、同第一五号証に各成立に争いのない乙第六、七号証、同第一二号証を併せ判断すれば、本件自動車は事故によつて屋根を下にして転覆し、助手席にいた被告中尾(このことは被告ら三名の供述が一致する)は、押し潰された車体に挟まれて自力で脱出できない状態でいたところ、間もなく付近住民の通報によつて出動した消防署員らによつて救出されて田中整形外科医院に収容されたこと、そして、同被告はその日か、翌日被告中原の見舞を受け、事故後はじめて同被告と話をしたこと、しかしこれより前すでに被告中尾は同医院において、医師立会のうえ警察官に対し、事故の際の被告田中の運転の事実を告げていたことが認められる。また、甲第一三号証、同第一五号証、乙第六、七号証、同第一二号証、同第一四、一五号証、成立に争いのない乙第五号証を総合すれば、被告中原は本件事故の直後、吉田と共に自力で本件自動車から脱出し、車外に気を失つて倒れている被告田中を認めたが、動転の故か被告中尾の所在を捜すこともなく、吉田と共に事故現場からかなり離れた物陰に身を隠して様子を窺い、事故を知つて現場に集つた付近の人々の通報によつて救急車が来るのを見届けた後、吉田を連れ一時間余り歩いて、瀬高町下庄の友人永瀬良隆方に行き、同人に吉田を大牟田市の自宅まで送り届けることを依頼したこと、その際事情を話し、被告田中が本件自動車を運転して事故を起したことも話したこと、なお被告中原は永瀬と共に自動車で吉田をその自宅まで送つた後、永瀬に連れられて事故現場へ引返して現場にいた警察官に対し事情を述べ、運転者が被告田中であつた旨を述べたことが認められる。以上の認定に反する証拠はない。そうすると、被告中尾、同中原は本件事故後に話を交わす前に、すでにそれぞれ第三者に対し、本件事故の際の運転者が被告田中であつたことを告げているのであり、これによれば、被告中原、同中尾および吉田が本件事故時の運転者について、真実を曲げて虚偽の供述をすることを通謀したと疑うことはできず、この点に関する被告中原らの供述の信用性に欠けるところはないものと認められる。

三  被告田中の責任

被告田中を含め、被告ら三名がバー「しろ」における飲酒によつてかなり酔つていたことは前認定のとおりであり、甲第一三、一四号証、乙第一三号証、被告中尾本人尋問の結果によれば、被告田中の本件自動車運転は当初から進路が左へ左へと寄る傾向があり、これに気づいた助手席の被告中尾が注意を与え、被告田中はその都度進路を正常にもどしてはいたが、かなりの高速で運転を続けて本件事故現場に差しかかり、本件自動車を左方へ逸走させ、歩道との間の縁石に衝突させて本件事故を惹起するに至つたことが認められる。右によれば被告田中は酒に酔い、前方注視が果せず、正常な運転ができない状態で、あえて本件自動車を運転し、これによつて本件事故を発生させたものと認められる。右認定を覆えすに足りる証拠はない。

同被告の右運転行為に過失があることは明らかであるから、同被告は民法七〇九条により、本件事故によつて生じた原告らの損害を賠償すべき責任がある。

四  被告中原、同中尾の責任

被告田中の前示酒酔いに起因する過失行為によつて本件事故が発生したこと、および被告中原、同中尾が本件事故前にバー「しろ」で被告田中と共に飲酒し、その後同被告運転の本件自動車に同乗し、本件事故発生に至つたことは原告と被告中原、同中尾間に争いがないところ、同被告らはその共同不法行為の成立を争うので、この点について判断する。

1  被告ら三名相互の間柄、被告中原と吉田との関係、バー「しろ」での飲酒の状況と、その後の本件自動車に乗車するまでの経緯等については、さきに被告田中との関係で認定したとおりであるが、なお、甲第一四、一五号証、乙第一三、一四号証、被告中尾本人尋問の結果を総合すれば、被告中尾は、同田中が同中原に代つて運転をしようとして指示したところに従い、その運転を容認して被告中原のポケツトからエンジンキーを取り出し、本件自動車の助手席に乗り込んで、これを所定の箇所に差込み、ついで被告田中が運転席に乗つて運転をしたこと、その間被告中原も当初は自ら運転すると言い張つたが、結局は被告田中の運転を許容して吉田と共に後部座席に乗つたことが認められ、これを覆えすに足りる証拠はない。なお、乗車後の被告田中の運転状況については前記三の同被告の責任の項で認定のとおりであり、被告中尾本人尋問の結果によると、被告中尾は、被告田中の危険な運転をやめさせようとはせず、また右各証拠および被告中原本人尋問の結果によると、被告中原は乗車後間もなく寝込んでしまつたことが認められる。

2  被告中原、同中尾はバー「しろ」での飲酒時において、被告田中の運転は予定されていなかつたと主張するのであるが、右の各証拠のほか甲第一三号、および弁論の全趣旨を総合すれば、被告らには、バー「しろ」を出た後に本件自動車を使用せず、タクシーを利用する等の考えは当初から全くなかつたものであり、被告ら三名のうち誰かが本件自動車を運転することが、暗黙裡にも互に了解されていたこと、被告ら三名はそのような状況で共に飲酒を続けて酔い、結局は被告中原、同中尾において、被告田中の酒酔い運転を制止せず、これを容認して、同被告運転の車に同乗し、その運転行為を利用したことが認められ、これを覆えすに足りる証拠はない。

3  つぎに被告中原、同中尾は、バー「しろ」を出た後は友人の永瀬良隆方へ行く予定であつたので、同被告らが被告田中の運転行為を黙認したとしても、それはあくまで「しろ」から永瀬方までの五〇〇メートルぐらいの距離の運転についての黙認であつたと主張する。しかし右2の認定に供した各証拠および乙第五号証、証人永瀬良隆の証言並びに弁論の全趣旨によれば、被告ら三名は本件事故前日の夕方から被告中原が他から借りて来た自動車や本件自動車を乗り回して(同被告が運転)遊び、午後一一時ころになつて大牟田市まで行つて女子高校生の吉田を連れ出し、その後の深夜に、右四名とも未成年者でありながらバー「しろ」で飲酒したものであり、その後は被告田中のガールフレンド中島ミキを連れ出したうえ、都合によつては永瀬良隆、徳永某も加えて、右徳永の家人の所有する空家で、酒を飲み、夜遊びを続ける魂胆でもあつたこと、なお、「しろ」を出てからは一応永瀬方に行くことになつていたものと認められる。右事実によれば、被告らが永瀬方に行つてからは、同人と運転を交替することが予定されていたものと認められるが、一方、右認定の経緯に徴すれば、被告らのその夜の行動は、未成年者らの不良交友とも目されるもので、夜遊びのためにする多分になりゆきまかせのものであり、右永瀬との運転交替も被告ら間に確たる約束があつた訳ではなく、一応の予定に過ぎず、従つて被告田中の性格からみて、同被告が運転をしたら、まずそのガールフレンドを呼びに行くことも被告中原、同中尾において、あらかじめ予想されたものと推認するのが相当である。このことは、被告中尾において、同田中がまず中島方へ行こうとしていることに乗車後途中で気がつきながら、何ら文句を言つた形跡がないことからも裏づけられる。

4  以上によれば、被告中原、同中尾の主張を認めることができない。なお、右認定したところによれば被告らのその夜の行動は、かなり、なりゆきまかせのものではあるが、これを全体として通観すれば、被告らが中心となつて仲間を誘い出し、夜遊びをする目的で結びついており、その面でそれなりの一体性を肯認することができる。

以上説示したところによれば、被告中原、同中尾は被告田中の酒酔い運転による原告らへの加害行為につき客観的共同原因を与えたものというべきであり、被告中原、同中尾は民法七一九条一項の共同不法行為者として、本件事故によつて原告らに生じた損害を賠償すべき責任がある。

五  原告らの損害

原告大坪本人尋問の結果およびこれによりいずれも真正に成立したものと認められる甲第二ないし七号証、同第九ないし一一号証、原告石橋本人尋問の結果およびこれにより各真正に成立したものと認められる甲第八号証、同第一二号証によれば、本件事故によつて、原告らが、それぞれその主張のとおり損害を受けたことが認められ、これに反する証拠はない。

六  結び

以上によれば、原告らの被告らに対する本訴各請求は理由があるので全部正当として認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九三条を、仮執行の宣言につき同法一九六条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 仲吉良榮)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例